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卒業生の声

卒業して思う事

疋田弘之(86期 2012年3月卒業)

4月に入り長引いた寒さもようやく和らぎ、だんだんと暖かくなってきた中、卒業後1ヶ月を過ぎた武蔵を振り返ると、武蔵での生活が遠い昔のようにも、またつい昨日のようにも感じられます。私の武蔵に対する距離感はこのようにまだあやふやなままですが、私が既に武蔵を卒業したという事実は、もはや武蔵での生活が過去のものになってしまったという実感とともに一抹の寂しさを感じさせます。しかしまた卒業は、武蔵で得たものを土台に次なる段階に進む始まりでもあり、その意味で私はこれから先も武蔵と、目には見えなくとも何らかのつながりを持って生きていくのではないかと、楽観的な心持ちで過ごしています。

武蔵について何かを語るとき、よく武蔵の良さが話題となりますが、私は、武蔵で学んだことの本当の意義はおそらく具体的な形をもって示せるものではなくて、時折その横顔を見せてくれるだけの非常に捉えづらいもので、しかも人によって見え方が違うものはないかという気がしています。そこで、この場では武蔵の良さが何かについてはあまり触れず、私の過ごした武蔵について振り返ることにしたいと思います。

武蔵の6年間何をやっていたかと問われれば、私はまず「水球」と答えます。というのも、私は中高6年水泳部で水球をしていたからで、これは私の武蔵生活の中心をなしています。水球部は武蔵では辛い部類の部活であって、現役時代は大変な思いもしましたが、6年間やりとおすことができたその達成感は何物にも代えがたいものです。もちろん部活は強制ではなく入るも入らないも自由であり、部活をやっていなくとも充実した生活は送れると思います。しかも部活動に入っていると確かに多くの時間を部活にとられ、自分の時間を作りにくいという欠点もあるかもしれません。しかし私は水球部に費やした6年間を微塵も後悔していません。部活動で得られた上下の関係や同期の仲間の存在で日々の武蔵での生活は豊かになりました。机に座っていては学べないことも学ぶことができました。そしてまた、これからも部活をやっていてよかったと思える機会が来るように思えてなりません。

このように述べると私が6年間水球しかやっていなかったかのように思われるかもしれませんが、そのようなことは全くありません。記念祭や体育祭といった行事の運営にも関わることができ、高1の総合講座や高3の英語劇をはじめとする多くの授業もすばらしい思い出として自分の中に残っています。そしてまた、これらのことは私が武蔵に入ってよかったと思うことの1つでもあります。武蔵では積極的に何かをしようとする学生に対し最大限それを支える環境があります。記念祭などの行事は言うまでもなく生徒主体で進行しますし、授業においても積極的に参加すれば先生方は多くのものを返してくださいます。例えば私は高1の総合講座を2つとりたくて、先生にお願いしたところ先生は快く承諾してくださいました。また武蔵には特別授業なるものがあり、普段の授業ではできないような授業を受けることもできました。このように武蔵には生徒の自発的な学びを支える体制が整っていますが、私自身それを最大限活用できたとは思っていません。武蔵を離れて、もっと利用しておくべきだったと後悔しています。しかし考えてみれば武蔵の誇る学びの環境は到底1人で十分活用できるものではないように思えます。むしろ多様な生徒の自発性にことごとく対応しうるという意味での環境の豊かさが武蔵の学びの特色であり、素晴らしいところであるように思います。

さて、武蔵を卒業した私にとっては武蔵という学校がすばらしい学校であることに全く異論はないのですが、最近世間では進学実績を基に武蔵についていろいろと騒がれているようであります。確かに武蔵の授業においては世間の学校で教わることと全く違ったことを教わることが多くあります。正直なところ受験に全く活かされない授業もあるように思います。しかし私はそのような授業があってこそ武蔵に入った意味があるような気がするのです。先生方の個性的な授業は実用的なものの役には立たないかもしれませんが、学ぶことの楽しさや奥深さを感じさせるものであったと思っています。ただ、これが武蔵にいたからこそ感じる思いであることもまた事実であり、武蔵を知らない人にこのすばらしさを伝えることの必要性もあるように思います。

ここまで武蔵の環境のすばらしさをとりとめもなく述べて参りましたが、そのような環境で6年間過ごすことができたことのありがたさは計り知れないものであり、そのような環境を整えてくださった教職員の方々、歴代の先輩方へは感謝してもしきれないほどです。自分たちが武蔵の歴史から受けてきた恩恵に答えるためにも、このたび卒業した86期生として、これからは後輩の学びの助けとなるべく精進を重ねていきたいと思います。

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