校長散歩

2025.12.20

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842 木曜会「SNS時代における国際報道」

木曜会での講演の様子
木曜会での講演の様子
12月11日夜、ちよだプラットフォームスクウェアを会場に、武蔵高等学校同窓会主催の木曜会が開催されました。木曜会は各界で活躍される武蔵OBをお招きしてお話を伺うもので、近年は同窓会のご厚意もあり、現役生及び保護者の皆様にも門戸を開いていただいています。
この日は、現在山梨県立大学で非常勤講師(メディア論)を務められており、NHK解説委員長や公益財団法人NHK交響楽団理事長などを歴任された今村啓一氏(54期卒)に、「SNS時代における国際報道」という演題でお話をいただきました。高中からは在校生が16名、保護者も1名参加させていただきました。(他にオンライン参加もあり)
講演は、①SNS・光と影、②報道と世論-歴史の教訓—、③国際報道に求められるものという骨子をもとに、『おはよう日本』チーフプロデューサー、アメリカ総局長、ヨーロッパ総局長、国際放送局長、さらに解説委員長など、NHKでの得難い経歴を踏まえた、極めて分かりやすく示唆に富んだものでした。
メディアやSNSを通して人々が情報を得るとき、人は「見たいものを見る。信じたいものを信じる」という情報獲得の本質をつかれた話をされ、そのとおりだと思いました。また、現在、国際社会においてSNSで流されている情報が、国際発信競争ともいうべき、地域や立場によって、いかに操作されているかについての実例もよく理解できました。
また、武蔵時代の授業で教材として扱われた中江兆民の『三酔人経輪問答』を思い出され、当時はよくわからなかったけれど、再読されたという話は印象的でした。
正義は人によって国によって異なる。したがって、国際報道というのは大変な作業であること。そしてSNSが主流となっている現代において、どうしてもそれが分断につながりやすいが、そうした状況において、国際情勢の変化、直面するリスクに対し、市民が判断する材料をいかに提供し、どう世論をつくっていくかが国際報道においては求められている。さらに、金子みすゞさんの詩『積もった雪』を引き合いに出しながら、自分の価値観と違う人が何を考えているかを考える努力と、対話をして議論する場を少しでも持つことが大切であると語る今村さんに、武蔵で学んだ教育が今も根底に生きていることを感じました。
在校生にとっても大いに刺激になったと思います。素晴らしいお話でした。この場を借りて感謝申し上げます!