校長散歩

2025.01.10

  • #生徒の活動
  • #チャレンジ

712 2024日本倫理哲学グランプリ 入賞

校長室での記念撮影
1月8日、2024日本倫理哲学グランプリ(IPO(国際哲学オリンピック)日本組織委員会 主催)で見事入賞を果たした高2の塚田君が、校長室に報告に来てくれました。
日本倫理哲学グランプリとは、時代を背負う若者たちが物の考え方を哲学的に涵養し訓練することを目的として、全国の中高生を対象に実施している哲学エッセイのコンテストです。今回、塚田君は応募総数158編のうち、上位9%に当たる奨励賞を見事受賞しました。具体的には、事前に提示された4つの課題文の中から、「『環境破壊や戦争、格差の拡大など、地球の未来に希望はもてない。だから子どもは作るべきではない』という考え方についてどのように考えるか」を選択し、4000字程度のエッセイを作成しました。エッセイの題は「反出生主義に対する反論~生の倫理を考える~」とのこと。
詳しく話を聞くと、反出生主義とは、デイヴィッド・ベネターが提唱した理論で、『生まれてこないほうが良かった』という著書に示されるように、人間の存在自体が害悪であるという視点から、人類の生殖を否定して段階的に滅亡すべきという考え方とのことです。
塚田君のエッセイでは、このベネターの理論について、人間の生殖を本能ではなく道徳的規範の立場から論理的主張を展開していることを評価しつつ、幸福の主観性の視点から反論を試み、どんな境遇であっても、苦しみや不幸の深刻さを受け入れつつ、誕生を肯定しようと志す先に真の倫理があるのではと結んでいます。立派な考察に感心しました。
塚田君が中1のときに、私も道徳の授業で教えました。その内容もよく覚えてくれていて、「武蔵ではじめて哲学に触れたのは、中1道徳でのフランシス・ベーコンの『ノヴム・オルガヌム』でした。お礼を言いたい」と語ってくれました。今後は可能であれば、哲学を研究していきたいとの抱負を語ってくれました。自分の道を切り拓いていってほしいと思います。
おめでとうございました!