校長散歩

2025.03.21

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741 林肇前駐英国特命全権大使の特別授業

3月12日、大学1号館のシアター教室を会場に、昨年11月まで駐英国特命全権大使であった林肇さん(51期卒)の特別授業が行われ、高1の全生徒に加え中1から高3までの希望者を含み、250名の武蔵生が参加しました。
演題は「混迷と分断の世界-その中で私たちはどう生きるか-」です。お話はまず「今、私たちがどのような世界にいるのか」という現状認識について、①国際情勢の変化、②先進民主主義国内の動向、③人間の活動が地球に与える影響という観点から語られました。
今日の国際情勢は、1980年代から90年代にかけての冷戦崩壊に伴って登場した「冷戦後の世界」の特色が交代・喪失し、「混迷と分断の世界」とも呼ぶべき時代の転換点に到達している。そして先進民主主義国内においては、有権者の分断と国内政治の不安定化・流動化という変化が共通して見られる。一方で、世界の人口は21世紀末には110億人になることも予想される中で、気候変動・森林減少・海洋汚染・生物多様性の問題などから、人間の活動が地球の限界を超えてしまうのではないかと危惧されている。人間の活動が地球の限界を超えないためには全世界的協力が不可欠で、それは、これまで生き残ってきた現生人類(ホモ・サピエンス)が、その生き残ってきた要因を生かし、例え「混迷と分断の世界」の中であっても、いかに地球と寄り添って生きるための工夫ができるかに人類の未来はかかっているという、問題提起でお話は終わりました。
豊富な外交経験を踏まえ、幅広い視野と深い洞察に裏打ちされた、本質的な問題提起だったと思います。
約50分間のレクチャーのあと、質疑応答の時間になりました。選挙権を持つにあたっての投票意識、ネットの発達に伴う政治対立の問題、賢者による独裁制しかもはやないのでないかという見解への意見、ヨーロッパの安全保障と核の問題、アメリカの今後の外交戦略、NATOにアジアがかかわる意義、限界に達しないためサボタージュする人への対応など、質問は多岐にわたりました。一つ一つの質問に丁寧にお答えいただいたので、50分間の質疑応答の時間も7人の質疑応答でタイムアップ。とても濃密な時間となりました。
林さんは、授業の冒頭、サケが生まれて育った川に戻ってくる話をされました。「武蔵」という川で育ち、「世界」という海で活躍され、今回母校に戻って話をしていただいた林さんの思いが伝わるエピソードでした。その林さんから、武蔵生へのメッセージを、以下のように芳名録に記帳していただきました。
「世界に羽ばたき 世界で活躍し 人類に貢献する 武蔵生よ出よ」
お忙しい中、母校に来ていただき、後輩と貴重な時間を共有していただいた林さんに、この場を借りて、改めて御礼申し上げます。
有難うございました!
  • 世界に羽ばたき 世界で活躍し 人類に貢献する 武蔵生よ出よ
    林さんからいただいたメッセージ
  • 池田学園長も交えての記念撮影
    池田学園長も交えての記念撮影