校長散歩

2023.02.13

  • #授業

483 武蔵の授業19 -中1社会「模擬国連学習」-

タブレットを手に交渉している各国大使役の生徒たち
武蔵では、一つ一つの授業の中で毎年、様々な創意工夫がされています。今年は中1社会の授業で、「模擬国連学習」がされているということでしたので、2月9日、授業見学に行きました。
これは、国連の安全保障理事会での協議、決議採択を実際にやってみようという取組です。生徒たちは、現在の安全保障理事会を構成する常任理事国5国(アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国)と非常任理事国10国(アルバニア、ブラジル、エクアドル、ガボン、ガーナ、日本、マルタ、モザンビーク、スイス、アラブ首長国連邦)の大使になりきって、課題に対応します。決議採択には9か国以上の賛成が必要ですが、常任理事国には1か国でも反対したら否決してしまう「拒否権」があります。そのルールを踏まえてどう交渉するかが求められます。
今回のテーマは「ロシアによるウクライナ国内のエネルギー施設への攻撃について」という、まさに今日的な課題です。全6回の授業を通して、この問題の内容を理解したうえで、担当国の「外交方針」や「国益」をリサーチし、「大使になりきる」ことが1つ目の約束事。もう1つ、決議案が採択されることが目標なので、そのために相手を論破せずに、他国とも合意できる解決策を作り上げるという「他国と交渉する」ことが2つ目の約束事です。
この日は5回目の授業。生徒たちはタブレットを片手に、他国の大使と交渉し、決議案を作成する作業をしていました。決議案の提出には、決議案に責任を持つ「提出国(1か国)」のほかに3か国以上の「スポンサー国」が必要です。どうやらアメリカを中心とするグループと、中国を中心とするグループに大使たちは集まっていました。
次の時間は、この日提出された複数の決議案について質疑応答を行い、再交渉を行って決議案を「合体」するそうです。最終的に1つになった決議案に投票し、どのような結果が出るか。ロシアに反対される決議案では絵に描いた餅になります。そこをどうするかが課題です。そして最後は一人一人が、この間の学習で得た知識や学んだことを振り返り、フォームに書き込んで提出するとのことです。
生徒の発言を聞いていると、それぞれの国益を踏まえながら、自由に発言をしていて、いいなあと思いました。日本の授業では、とかく「正解をいわなきゃ」とか「恰好いいこといわなきゃ」と思いがちですが、今世界が直面し、大人でも解決が難しい課題に対して、中1らしく自由にのびのびと解決案を探っている様子は素晴らしいと思いました。
また、現代においては「多様性が大切」と言われますが、それは「みんな勝手でよい」ということではないでしょう。多様性を尊重しつつも、どう「統合」を見出すかは、今を生きる私たちに課せられている大きな課題です。その課題解決に向けて、生徒たちは貴重な体験をしているなと思いました!