校長散歩

2023.09.27

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556 ホームカミングデー - 中曽 宏 さん講演会-

講演会で語る中曽さん
9月9日、年に一度武蔵卒業生が母校に帰ってくるホームカミングデーが開催され、部活動を中心に現役生徒との交流が行われました。
その中で、恒例の卒業生による講演会が大講堂を会場に行われました。今年度の講師は大和総研理事長で元日本銀行副総裁である 中曽 宏 (なかそ ひろし)さん(47期卒)。242名の方が会場に訪れました。同窓会のはからいにより、同窓生だけでなく、現役生や保護者にも門戸を開いていただき、59名の高中生と18名の保護者が参加しました。さらに、オンライン配信もされ、多くの生徒・保護者も参加したとのことです。
演題は『日本経済試練の四半世紀』。副題は「三理想が支えた私の職業人人生」。現代日本が直面しているこの四半世紀の経済状況と今後の見通しについて極めてわかりやすく説明していただくとともに、その時代を生きる職業人としての覚悟や武蔵卒業生の気概を感じる素晴らしい講演でした。
「失われた30年」と呼ばれていますが、この30年の日本経済停滞の要因を、バブル崩壊後の日本の金融システム、人口減少の趨勢、デフレマインド脱却の難しさの視点から明快に分析されました。印象的だったのは、日銀マンという政策担当者としての強い覚悟と使命感です。バブル崩壊は後に発生したリーマンショックを上回る経済危機でした。その際、「すべての預金を守る」という覚悟のもと、いかにしたら日本の金融システムのメルトダウンを防げるか、「自分たちの後ろにはもう誰もいない」という使命感から、昼夜を惜しまず仕事をされていた様子をうかがい、胸にジーンときました。
また、日本経済の今後についても、賃金上昇やカーボンニュートラルへの取組を契機に、良い循環を促していくことへの見通しと力強い希望を語っていただきました。
最後に、三理想についても触れられました。「三理想はこれまでの職業人生の根底にあったけれど、特に東西文化融合や世界雄飛など、そのことの意味が最近よくわかるようになった」と語られ、とりわけ日本の潜在能力の高さに対する世界からの信用と、コミュニケーションツールとしての語学の重要性について語られました。「自動翻訳機ができても生身の言葉が大事。また、バイリンガルということでなく、きちんとした文法を理解し、話す内容をもっていることが重要」という、国際会議の議長を務められ、世界の人々から信頼を寄せられてきた中曽さんの言葉には説得力がありました。
フロアからの数多くの質問にも丁寧に答えていただき、人をそらさない答えの明確さはさすがでした。また、「国債発行と国際社会からの信用の関連」について問うた中学生からの鋭い質問に、「素晴らしいね」と感心していただいたことは印象的でした。
私は中曽先輩と同じバレー部でした。中曽さんの姿をよく覚えています。遙か昔、中曽先輩はハチマキをしながらサーブを打って、後輩を指導してくれました。あのときの誠実実直で包容力のある人柄が今も変わっていないことを感じた時間でした。
武蔵生に素晴らしいお話をしていただいた中曽さんに心から御礼申し上げます。
有り難うございました!