校長散歩

2024.04.24

  • #行事

629 創立記念講演会 — 池上彰 さん-

質問タイムでは、武蔵生からの質問が相次ぎました
4月18日、大講堂を会場にジャーナリストの 池上彰 さんをお招きし、全校生徒を対象に、創立記念講演会が開催されました。創立記念講演会は、校長散歩511でご紹介したように、かつて武蔵の創立記念日である4月17日に「記念式」を行い、その前後で行っていた講演会を、創立100周年を機に復活したものです。武蔵生の目線をあげ、心を鼓舞するようなお話をしていただくことをねらいとしています。
池上彰 さんからは、現代世界の状況を踏まえつつ、「学びの意味と生かし方」という大きなテーマでお話をいただきました。
まずお話は、中東で入手されたヒズボラの旗を提示しながら、イスラエル、ハマス、イランなど、直近のリアルな中東情勢についての「池上解説」から始まりました。さらに、これまでの数々の紛争地取材での生死と隣り合わせた経験や、生命を守るための取材の経験知について語られました。
続いて、NHKのテレビ記者を志し、地方放送局から歩み出されたご自身のジャーナリスト人生について語られました。また、NHK退社後、フリーランスとして世界90か国・地域を回られた経験から、記者時代に張り込み取材をしていたときの隙間時間を利用して学んだ「ラジオ英会話講座」や「経済学」がその後の仕事に役立ったこと、さらに英会話においては、「単なる英語力ではなく、英語で話すべき内容を持っていることが重要だったこと」なども語っていただきました。説得力のある言葉でした。
結びに、教養(リベラルアーツ)の大切さとグローバルに物事を見ていく重要性が語られました。教養(リベラルアーツ)とは知識の運用能力であり、学校などで学んだ世界史や小説などの様々な知識が人間や社会の理解に生きていくこと。また、スエズ運河やパナマ運河、さらに北極海航路などに言及しながら、いかに世界はつながっており、グローバルな視点から物事を見ていくことが重要かについて、これもまた丁寧な「池上解説」をしていただきました。
そうした教養の大切さを踏まえ、グローバルな視点から物事を見ていくことが、武蔵の三理想である「世界に雄飛する人物」につながるというお話をされて、講演は締めくくられました。会場内は時々笑いに包まれ、終始武蔵生をそらさない、あっという間の60分でした。
その後、30分の質問タイムに入りました。アメリカ大統領選の行方、言語の意味、歴史の捉え方、わかりやすい話をするコツなどの質問が相次ぎました。一つ一つ丁寧に答えていただきましたが、限られた時間でしたので、40人以上は並んでいた質問の列はさばききれず、12人でタイムオーバー。
ただ、そんな質問できなかった武蔵生に池上さんの本を紹介します。それは『池上彰が大切にしているタテの想像力とヨコの想像力』(講談社+α新書、2023年)です。お薦めの本です。身近な人から海外の人までを想像する「ヨコに広がる想像力」と、過去だけでなく未来の世界や未来の自分自身を想像する「タテにつながる想像力」、つまり空間と時間を超越した想像力こそ「世界を救う」のではないかということが具体的に語られています。
今日のお話に触発された諸君は、是非池上さんの書かれた書籍を通して、池上さんとの対話を楽しんでほしいと思います。
池上さんからは最後に、武蔵生へのメッセージとして、「Go for Broke(全力で)」という言葉をいただきました。「すべてをかけて、やってみようぜ」という意味だと思います。池上さんのジャーナリストとしての生きざまを良く表している言葉だと思いました。
大変お忙しい中、武蔵生のために時間を割いていただいた池上さんにこの場を借りて御礼申し上げます。
有難うございました!