校長散歩

2025.03.13

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740 武蔵の授業29-中1道徳-

中1道徳の授業の様子
校長散歩254303537でもご紹介したように、中1道徳では、組主任の先生方とともに、校長もまた授業を行っています。
具体的には、2クラス合同で隔週ごとに、視聴覚教室を会場に行います。1年間の流れとしては、まず「武蔵の三理想」を批判的に学んでいきます。三理想が制定された背景を知るために、武蔵の歴史について学んだうえで、三理想の一つ一つの意味について、先哲の思想や同時代の人の文献を手掛かりに、生徒にワークシートを書かせたり、生徒同士や教員生徒間の対話を通したりして、理解を深めていきます。
さらに、私が常々言っている「人権感覚」や「公共心」の意味について考えていきます。「人権感覚」とは「人権=人間の尊厳が侵されている、あるいは侵していると感知できる力」だと思います。また「公共心」は「自分の幸せだけでなく、みんなの幸せを考える心」だと思います。将来、世界のどこかを支える武蔵生にとって、いずれも大事なことだと考えています。
最後は「自由」について考えます。「武蔵は自由な学校だと思うか」と聞くと85%の生徒がそうだと答えます。一方で15%の生徒はそうでないといいます。理由としては、「校則はないけれど、スマホのルールなどの規制があるから」とかの一方で、「自由とはいえそれを誤解して好き勝手にやる人も見受けられるから、真の自由とは言えない」といった答えも出てきます。そして、最後に「真の自由とは何か」と一人一人に定義をしてもらいます。
武蔵は確かに、服装は自由で、細かい校則もありません。授業もただ教科書を教えるのではなく、教師一人一人の学問的関心に裏打ちされた面白い内容です。生徒も学びの自由を追求しながら、のびのびと成長していきます。一方で、在学中の6年間を通して、自由の意味について考えさせる様々な仕掛けがあります。その一つが校長が行う中1道徳の授業です。
混迷と分断が進み、自由や民主主義の意義が問われる時代だからこそ、真の自由の意味を考えさせ続ける重要性は高まっていると思います。